犯罪都市レシフェでの初戦当日、邦人被害はゼロ…陰にあった入念な事前準備(後編)


石田さんは「奇跡的」と表現した。ただ、実のところ影には入念な事前準備があった。



大会前に開設された在ブラジル大使館・総領事館統合ブログ(※)に、警察や組織委員会など、各方面から得た最新情報を掲載するのを皮切りに、様々な方法で被害を最小に抑えるべく、砕身した。



※在ブラジル大使館・総領事館統合ブログ

レシフェ以外の情報も掲載

http://wcup2014brazil.blogspot.com.br/2014/03/blog-post_47.html(PC,スマホのみ)




試合開催を直前に控えた11日からは、空港などで日本人渡航者に対して、ボランティアなどを加えて、スタジアムへの詳細な路線図や緊急連絡先、注意喚起が記されたリーフレットを早朝から深夜まで配布。当日もキックオフ7時間前からスタジアム入りするとともに、深夜まで試合後の対応に追われた。



試合自体は1−2と逆転負けを喫してしまったが、石田さんらの尽力などもあり、犯罪都市での日本戦は無事に過ぎ去った。



ところが、残念なことに試合翌日から邦人の盗難被害は発生する。何しろ通常時でも治安は悪い。出張駐在官事務所を訪れた16日も、「さっきも、盗難被害のことで対応していたんですよ」ということだった。試合は終わっても、彼らの業務は続くのだ。



ちなみに日本がグループ2位で勝ち上がった場合、6月29日の決勝トーナメント1回戦で再度レシフェを舞台に、戦いを繰り広げることになる。再び気の抜けない忙殺される日々が訪れる可能性を問うと、石田さんは事も無げに口を開いた。



「僕らは、邦人になにかあった場合に対応することが仕事ですよ。そのために、ここにいるわけですからね」



最後まで温和な笑顔とこちらを楽しませる語り口調を崩さなかった石田さんから、「また、来てくださいね」という言葉を受けるとともに力強い握手を交わし、再会を約束した。



日本人サポーターが再び、大挙してレシフェの地を踏むかどうかは神のみぞ知るところになる。いずれにせよ、日本代表、サポーター、そして石田さんらの戦いは続いていく。願うべくは、それぞれが最良の形で大会を無事に終えることだ。



▼笑顔の日本サポーターたち














【プロフィール】
小谷紘友(おたに・こうすけ)
1987年、千葉県生まれ。学生時代から筆を執り、この1年間は日本代表の密着取材を続けてきた。尊敬する人物は、アルゼンチンのユースホステルで偶然出会ったカメラマンの六川則夫氏。

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